ペインクリニックについて
痛みは病気の兆候を示すものであり、苦痛ではありますが必要な感覚です。しかしながら痛みの原因が分からないまま痛みが続いたり、原因となる病気が治癒しても痛みを訴える患者は少なくありません。このような慢性痛を持つ患者は日本全国で2000万人以上とも言われています。ペインクリニックはがんのように明らかな原因があって痛みを有する患者だけではなく、そのような慢性痛の患者の治療を行っています。薬物療法だけではなく、神経ブロック療法、手術療法などを用いてその治療に努めています。
当院のペインクリニックでは慢性痛やがん性痛の症状管理を主に行っております。
神経ブロックとは?
神経ブロックとは、痛みに関わる神経に向かって針を刺し、局所麻酔薬などを注入することで、神経の伝達を遮断する治療です。局所麻酔薬は数時間効いて、その後は何も残さず、すっかり元に戻るのが特徴です。
ではなぜ局所麻酔薬を用いた神経ブロックにより、永年の痛みが和らぐのでしょうか。それは神経ブロックが痛みの悪循環を断ち切るからです。
「痛みの悪循環」とは?
たとえば手や足にケガをした場合、その刺激は知覚神経を通って脊髄に伝えられ、そこからさらに脳に伝わり、手や足に「痛みがある」と脳が感じます。そうすると脳はその痛みに対して反応します。
運動神経を興奮させて筋肉が硬くなり、また交感神経を興奮させて血管が収縮します。そうなると血液の流れが悪くなり、ケガをした部位が酸素不足になります。すると痛みをさらに悪化させる物質(発痛物質)が作られ、痛みが持続します。これが痛みの悪循環です。
この悪循環をどこかで断ち切れば、血液の流れが改善して酸素の供給が増加し、発痛物質が洗い流され、長時間続いた痛みが和らぎます。
薬物療法
最近は一般的な鎮痛薬だけではなく、鎮痛補助薬と言われる神経に作用する薬や漢方薬を用いたり、モルヒネに代表されるオピオイド鎮痛薬を用いたりして痛みの軽減に努めています。
神経ブロック療法
内容によって外来や入院で行います。手術室にてレントゲン装置を用いたり、最近は超音波を使用して神経ブロックを行います。痛みの状況によっては熱凝固術やアルコールを用いて長期に痛みが取れるように神経破壊術を行います。
手術療法
- 薬物療法では解消しないがん性痛患者に対して脊髄のそばにカテーテルを埋め込み、モルヒネを投与する脊髄鎮痛を実施しています。
- 腰椎手術を経験され、痛みが再び出現した方に最近はカテーテルを用いた硬膜外神経形成術や硬膜外刺激電極による脊髄刺激療法を実施しています。
対象疾患
当院のペインクリニックでは、以下のような病気の診断や治療を行っています。
(1)全身にみられる痛み
- 悪性腫瘍による痛み(さまざまな部位に発生する癌などの悪性腫瘍による痛みの治療を行います。)
- 帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛
- 外傷後に残存し長期間続く痛み
- 末梢血行障害による痛み(バージャー病、閉塞性動脈硬化症など)
- 脳血管障害後の痛み
- 骨粗鬆症による痛み
(2)頭部、顔面の痛み
- 三叉神経痛 (額、上あご、歯、歯茎、下あご、口唇、舌などに生じる鋭く激しい短時間の痛みです。会話や食事で誘発されます。)
- 頭痛(片頭痛、緊張性頭痛、群発頭痛など)
- 非定型顔面痛
- 顎関節痛
(3)首、肩、上肢の痛み
- 頚肩腕症候群(肩こりなど)
- 頚椎症
- 外傷性頚部症候群(いわゆる「ムチ打ち」)
- 肩関節周囲炎(いわゆる「五十肩」)
- 胸郭出口症候群
- 幻肢痛
(4)胸背部の痛み
- 肋間神経痛
- 胸椎椎間関節症
- 開胸術後に残存した痛み
(5)腹部内臓の痛み
(6)腰下肢の痛み
- 腰痛症
- 坐骨神経痛
- 椎間板ヘルニア
- 脊柱管狭窄症
- 椎間関節症
- 変形性腰椎症
- 腰椎術後疼痛症候群 (腰椎の手術をした後に残存・再発した腰や下肢の痛みやしびれ)
(7)痛み以外の疾患
- 顔面神経麻痺
- 眼瞼、顔面痙攣(ボツリヌス毒素を用いて治療をします。)
- 網膜血管閉塞症
- 多汗症
診療スタッフ
松本重清(診療科長)、中野孝美、 山本俊介、池邉朱音
診療について(麻酔科外来にて行っております)