集中治療室(ICU)について

大分大学医学部附属病院 集中治療部(ICU)より
患者さんやご家族の方へ

ICU(集中治療部)

どうしてICUに入室するの?

敗血症,大動脈瘤破裂,急性心筋梗塞,脳出血,重症熱傷など命に関わる容体の人は,手術だけでは治りません。人工呼吸器や透析器,血圧や脈拍を調整し安定させる薬や,感染症や炎症を抑える薬剤などをみな総動員し,回復しようとする患者さんを支えるのがICUなのです。合併症のある患者さんが大きな手術を受けた場合や心臓手術など手術自体が患者さんに大きな侵襲をあたえるため回復まで少し時間がかかる場合など,しっかり状態を監視,管理する必要がある人もICUの対象です。ICU入室患者の内訳としては,70%が当院での定例手術後患者で,残りの30%が院内もしくは院外からの重症救急患者です。診療科別の内訳は心臓血管外科が約50%と最多で,その他外科系診療科に限らず内科,小児科など多岐にわたります。救命救急センター棟の新設後も,多臓器補助が必要な症例や緊急手術適応と判断される症例は当ICUで管理しています。

過去11カ年の大分大学ICU入室患者数
2015年度大分大学ICU 各科別入室患者数(計642名)

大分大学ICUってどんな場所?

大分大学医学部附属病院集中治療部(ICU)は1985年に開設され,2016年8月より1床あたり20㎡以上の特定集中治療室管理基準に対応した8床の新設ICUにリニューアルし,24時間体制で最高水準の医療を提供できるようにさらなる努力を重ねています。これまで我々が治療した重症患者数はすでに13,000例を超しており,大分県下最大規模の急性期医療の中枢として重要な役割を担っています。当ICUは日本集中治療医学会および日本急性血液浄化学会の施設認定を取得しています。

病院によっては,心臓は循環器の先生・肺などは呼吸器の先生と,専門分野ごとに管理を行うICUもあります。これをオープンICUというのですが,当病院はクローズドICUといって,私たち麻酔科医が集中治療専任医として24時間絶えず患者さんの管理を行っています。もとは他科の先生の患者さんでも,ICUでは私たち集中治療医が一元的に管理し,責任は集中治療医が持つという形です。そうすることで指示系統もシンプルになり,容体が急変した時にも迅速で的確な治療が可能になります。もちろん,そうした環境を整えるためにはチームスタッフ全員に高度な知識や技術が求められるわけで,実はこうしたクローズドICUを備えた病院は,あまり多くないというのが現状です。さらに私たちのICUには現在,集中治療専門医の資格を持っている麻酔科医師が8人いるのですが,ひとつの施設にこれほど多くの集中治療専門医がいるところは,そう多くありません。

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なぜ麻酔科医がICUに常駐しているの?

ここでまず麻酔科医の仕事についてお話しします。一般的には手術時の麻酔を担当するだけと思われがちですが,私たちは血圧や脈拍さらに呼吸など,手術中の患者さんの体調全般を常に管理しています。麻酔をかけるためにさまざまな薬を使うわけですが,薬には当然メリットもデメリットもあります。麻酔の影響で血圧が下がるとか心拍数が下がるとか,自力での呼吸ができなくなるとか・・・そうなると点滴や薬で血圧を上げたり人工呼吸のためのチューブを入れたりして対応するのですが,それらもすべて麻酔科医の仕事です。眠っている患者さんは体調の変化を訴えられませんから患者さんの代わりに手術中の体調を管理する人間が必要なわけで,その仕事をしているのが身体のすべてに精通している我々,麻酔科医なのです。そうすることで,メスを握る先生が安心してベストを尽くせる環境を作っているのです。そして手術が無事に終わったら,今度は身体を元の状態へと回復させることが重要になります。簡単な手術だと短期間で一般病棟に戻れるのですが,大きな手術の後や合併症のある患者さん,さらに高齢の患者さんなど,回復までに時間がかかるため術後しばらく体調を注視しておかなければいけない場合も数多くあるのです。とはいえ,その人たちを何日も手術室で治療するわけにもいきませんし,一般病棟で対応することも困難です。

ですがICUであれば,充実した設備と専門スタッフの24時間体制の管理のもと,手術後の回復施設として最高の環境が整っているのです。つまりICUは"病院の中の病院"なのです。そしてそのICUで求められる循環器や呼吸器・消化器などの全身の専門知識が,患者さんの体調全般を管理する麻酔科医の専門知識と重なる部分がとても多いのです。ですから手術室から一般病棟に戻るまでの安全を確認する場であるICUこそ,麻酔科医の知識と経験を最大限に活かせる場所といえます。

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具体的な全身管理のポイントは?

ICUでは循環器や呼吸器・消化器・脳神経・泌尿器など,さまざまな専門分野の観点から患者さんを注視し,全身管理を行っています。そのほかでは,各臓器の休息治療が行われているのも大きな特徴です。たとえば手術のときにショックで血圧が急に下がったりすると血流が悪くなって臓器に十分な酸素が供給されなくなり,機能不全に陥ってしまいます。そうならないように酸素の供給を増やすとともに,疲れた臓器を休息させることで酸素の需要を減らします。これが休息治療です。この治療が対象となる重要臓器は「脳・心・肺・肝・腎」の5つで,最新の医療機器や薬などを使うことで機能を代行して臓器自体を休ませ,その回復を促すのです。私たちは,麻酔をかけることで血圧がどのくらい下がるか,それに対して血圧を上げる薬をどれくらい与えるか,人工呼吸の設定をどうするかなどを熟知しているので,予断を許さない状況のなかでも最適な全身管理を施すことができるのです。疲れている臓器は元気になるまで休ませてあげて,それぞれの臓器を回復させることで全身を回復させる。これが全身管理のポイントです。そのために医師だけでなく看護師・臨床工学技士・薬剤師・管理栄養士など専門のスタッフとチームを組んで24時間体制で最高水準の医療を提供できるよう努力を重ねています。

ICUで行う高度な治療にはどういうものがありますか?

当ICUにおける治療の一部をご紹介します

大分大学ICUで可能な各臓器の休息(rest)治療とは?
低体温療法
蘇生後(心肺停止後)脳症のほか頭部外傷などで脳圧が上昇した場合に適応があると報告されている治療法です。全身麻酔下で全身の体温を34度程度まで低下させ,虚血領域やその周辺での神経細胞の損傷や脳浮腫などを防ぐために行われますが,感染や循環不全などの合併症もあるため高度な全身管理ができるICU で行う必要があります。
補助循環
IABP(大動脈内バルーンパンピング), PCPS(経皮的心肺補助装置),VAD(体外設置型補助人工心臓)などの補助循環装置が必要な,心臓外科術後や心筋梗塞後の心拍出量低下,心筋症や重症心不全の患者さんに対し,超急性期を乗り越え,次なる治療への橋渡しが出来るよう,厳密な全身管理を行っています。
NPPV(非侵襲的陽圧換気)
呼吸補助は気管挿管,気管切開下の機械的人工呼吸が主ですが,マスクやネーザルハイフローを用いた肺にやさしいNPPVも施行しています。
ECMO(体外式膜型人工肺)
機械的人工呼吸で対応できない重症呼吸不全で,肺保護を目的とした新たな治療戦略としてECMOを導入し,さらなる治療成績の向上を目指しています。
図 ECMO施工前後における胸部画像所見の改善
血漿交換療法
肝不全に伴う毒性物質の除去とアルブミンや凝固因子などの欠乏因子を補充するために行われる治療法です。大量の輸血血漿を使用し体液置換をするため副作用も多く,他臓器の機能障害も合併する場合は高度な全身管理ができるICU で行う必要があります。
血液浄化療法
CRRT(持続的腎代替療法)の一つとして, HFVCHDF(高流量持続的血液透析濾過)を国内でも先駆け的に導入し,腎機能低下症例にとどまらず,循環不全,呼吸不全,肝不全,中毒,敗血症など様々な疾患の急性期治療に応用し,良好な治療効果を得ています。また,CRRT施行中の薬物動態の変動など,治療に不可欠となる臨床データを解析し,画一的ではなく,より個々の病態に応じたテーラーメイドの治療を心がけています。
大分大学ICU RRTの選択,大分大学ICU using HFV-CHDF protocol
敗血症治療
敗血症になった場合,治療が遅れてしまうと臓器傷害やショックとなり生命にかかわってしまいますので早急な敗血症治療が必要になります。当院ICUでは,このような患者さんに対し積極的にハイレベルな集学的治療を行い,非常に良好な治療成績を報告しています。
過去11カ年の大分大学ICU入室 重症敗血症及び敗血症性ショック患者の28日死亡率

敗血症診療ガイドラインに準じた治療を行うことはもちろんですが,ガイドラインを凌駕する究極の医療を目指しています。

教官スタッフおよび担当分野

職名 氏名 専門分野/専門領域
教授・部長 北野 敬明 麻酔・集中治療医学
診療教授・副部長 後藤 孝治 麻酔・集中治療医学
講師 日高 正剛 麻酔・集中治療医学
助教 安田 則久 麻酔・集中治療医学
助教 古賀 寛教 麻酔・集中治療医学
助教 山本 俊介 麻酔・集中治療医学
助教 安部 隆国 麻酔・集中治療医学
助教 大地 嘉史 麻酔・集中治療医学

麻酔科医師22名(集中治療専門医8名,インフェクションコントロールドクター4名,急性血液浄化認定指導者3名),看護師34名(急性・重症看護専門看護師1名,集中ケア認定看護師1名),臨床工学技士12名,薬剤師1名,管理栄養士1名がスタッフとして勤務しています。

患者さん・ご家族へのお願い

大学病院の使命として,臨床・研究・教育という3本柱があります。ICUに入室中の患者さんやご家族に対し,今後の集中治療の発展に必要な臨床研究・治験ならびに研修医・学生教育に関してご相談することがございますが,可能な範囲でのご協力を何卒よろしくお願いいたします。

面会時間は原則15-16時ですが,それ以外の時間でも可能な限り対応させていただきますので,遠慮なく集中治療部専任医師もしくは看護師にご相談ください。