急性腎障害の発症及び腎機能回復と miR-210の関連性の評価

【研究の名称】


急性腎障害の発症及び腎機能回復とmiR-210の関連性の評価

【研究の目的及び意義について】


集中治療室で治療が必要な患者さんは、高い頻度で急性腎障害(何らかの原因で急速に腎臓の機能が低下する状態)を合併します。重篤な感染症により臓器障害を生じる敗血症という病態や、心臓手術に伴うことが多いとされています。急性腎障害の診断に有用な血液や尿の検査(バイオマーカーといいます)は多数報告されており、一般的には血清クレアチニンやシスタチンC、尿中好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン(NGAL)などが用いられます。但し、どのバイオマーカーが急性腎障害の際に最も有用であるかは判明していません。また、急性腎障害の場合、原因が治療できれば腎臓の機能は回復することが多いですが、腎臓の回復過程とバイオマーカーとの関連についても詳しくは分かっていません。
近年、新たな腎臓のバイオマーカーとして期待されている物質として、miR-210というものがあります。miR-210はマイクロRNAというものの一種で、マイクロRNAは遺伝子の制御や細胞の増殖など多様な生命現象に関与しています。miR-210は急性腎障害で上昇することが報告されています。また、他のバイオマーカーと異なり、細胞の増殖などの臓器の回復過程に直接関与する物質であるため、その増減は腎臓の機能の回復と密接に関連している可能性が考えられます。そのようなバイオマーカーは今まで報告されておらず、腎臓の回復過程を詳細に評価することができれば、急性腎障害の新たな治療戦略につながる可能性があります。

【研究の方法及び期間について】


【研究方法】
この研究は,集中治療患者さんの中で特に急性腎障害を発症しやすいと考えられる患者さんを対象として,miR-210をはじめとしたさまざまなバイオマーカーと急性腎障害の発症及び腎臓の回復過程との関連を調べることを目的としています。
集中治療室に入室した時点から入室4日目まで、1日に1回の採血(一日 10mL)と採尿(一日10mL)を行います。手術を受けられる患者さんのみ全身麻酔導入後、執刀開始前のタイミングでICU入室前の測定を行います。
比較するバイオマーカーは、腎臓の機能を示す血清クレアチニン、血清シスタチンC、尿中NGALと、炎症の程度を示す血清CRP、血清プロカルシトニン、血清インターロイキン6、Mid(ミッド)-(-)regional(リージョナル) proadrenomedullin(プロアドレノメデュリン)(MR-proADM)です。そのうち、血清クレアチニン、血清シスタチンC、尿中NGAL、血清CRP、血清プロカルシトニン、血清インターロイキン6は通常診療で測定する検査結果を用いますので、追加の採血や採尿は必要ありません。miR-210用に血液 5mL、尿 10mL、MR-proADM用に血液 5mL必要となります。
診療情報から以下の項目を抽出し、miR-210との関連を調査します。
(年齢、性別、身長、体重、基礎疾患、集中治療室に入室する原因となった疾患名、(手術を受けられた患者さんでは)手術名、通常診療で行った各種血液検査や画像検査、身体所見、薬剤や輸液投与量、出血量や尿量などの体液バランス、透析等の特殊な治療の有無)
これらのバイオマーカーの値と急性腎障害の発症との関連、及び急性腎障害発症後の腎機能の回復過程とバイオマーカーの増減との関連を調査します。

【研究期間・参加予定者数】
この研究は以下の期間実施され,50名の方にご参加いただく予定です。
2022年 9月 27日 から 2024年 12月 31日まで

【研究対象者として選定された理由について(研究への参加基準)】


この研究は以下の項目にあてはまる方を対象としているため,あなたを選定させていただきました。
・当院の集中治療室で加療し、急性腎障害のハイリスク(集中治療室入室前の腎臓の機能が不良(慢性腎臓病 ステージG3b以上)、敗血症、心臓手術後、ショック、心停止蘇生後)と考えられる患者さん。

なお,以下の項目にあてはまる方は,この研究の対象としていません。
・18歳未満、妊娠中、慢性維持透析導入中、上記急性腎障害ハイリスクの患者さん以外の患者さん。

【研究対象者に生じる負担並びに予測されるリスク及び利益について】


この研究では10mlの採血を4回(手術患者さんは5回)行います。採血は、すべての集中治療患者さんに用いられている動脈ラインから定時検査と同時に行われ、その都度針を刺したりすることはないため苦痛を生じる可能性は低いと考えます。採血中に気分が悪くなったりした場合は,すぐに適切な処置を行います。もし定時検査の残余検体が使用できる場合などは、それらを用いできる限り採血量を減らせるように配慮します。尿検体は、廃棄検体を用いるため研究対象者への負担や苦痛は生じません。
なお,この研究に参加することであなたに直接の利益は特にありませんが,同じ病気で苦しんでいる患者さんに将来役立つ可能性があります。

【研究に関する費用について】


通常診療に関わる検査以外で、この研究にかかる費用は研究費を使用しますので,あなたが負担する費用はありません。また,謝礼もありません。

【健康被害に対する補償および賠償について】


通常、一般的な体格の成人で1日10 mLの採血が臨床上問題になることは無く,危険性は非常に低いと考えられるため,補償ならびに賠償は行いません.万が一有害事象が発生した場合は,直ちに適切な処置を行い対処します.

【研究への参加の自由と同意撤回の自由について】


この研究へ参加するかどうかはあなたの自由です。この説明書をよくお読みいただき,ご不明な点があれば遠慮なくお尋ね下さい。あなたご自身の自由な意思でこの研究への参加に同意していただける場合は,同意書へご署名または記名捺印をお願いします。なお,この研究への参加・不参加はこの場ですぐに決めなくても,ご家族などと相談されたうえで決めていただいても構いません。お断りになっても今後の治療で不利益が生じることはなく,また,一度参加すると決めた場合でもいつでも撤回することができます。参加途中で同意を撤回された場合でも,その後の治療で何ら不利益な扱いを受けることはなく,その時点での最善の医療を提供します。ただし,同意を撤回された時すでに研究結果が論文などで公表されている場合のように,研究結果からあなたを外すことができない場合があります。

同意書・同意撤回書

【研究により得られた結果等の取り扱いについて】


血液及び尿検体は、数例分の検体が一定数に達したのちに測定するため、検体採取から検査結果を即座に確認することができません。そのため、結果をリアルタイムに治療に反映するのは不可能であり、研究対象者個人の健康等に重要な情報を得る可能性はないと考えられます。従って、研究者本人に対する個別の情報の開示は行いません。

【個人情報の取扱いについて】


この研究は以下のようにあなたの個人情報を守ったうえで実施されます。
【加工の方法】
提供者の氏名を記号などに置き換えて,提供者の氏名が識別できないようにする加工を行います。ただし,必要な場合には提供者の特定が出来るよう,記号とその提供者の氏名が分かる対応表を保有しますが,この対応表は鍵のかかる保管庫で保管します。
【公表の配慮】
この研究の結果は学会や医学雑誌で発表する予定ですが,いずれの場合にもあなたのお名前や個人を特定する情報などプライバシーに関するすべての秘密を保持することを保証します。

【他の機関への試料・情報の提供について】


この研究で得た試料・情報を他の研究機関へ提供することはありません。

【試料・情報の保管及び廃棄の方法について】


【試料】
この研究で採取した血清及び尿検体は,大分大学医学部麻酔科学講座の冷凍庫にて,この研究の最終の論文等が発表された後,5年間厳重に保管されます。保存期間終了後は,本学の規定に沿って個人が特定されないようにして廃棄されます。
【情報】
この研究で収集した情報は,大分大学医学部麻酔科学講座にて,紙の資料は鍵のかかる保管庫にて保管され,電子データはパソコンにパスワードを設定して,この研究の最終の論文等が発表された後,10年間厳重に保管されます。保存期間終了後は,本学の規定に沿って個人が特定されないよう,紙の資料はシュレッダーで廃棄され,電子データは復元できないように完全に削除されます。

【研究資金について】


この研究は,公的な資金である大分大学医学部麻酔科学講座の基盤研究費を使用します。

【利益相反について】


本研究は上記の公的な資金を用いて行われ,特定の企業からの資金は一切用いません。「利益相反」とは,研究成果に影響するような利害関係を指し,金銭及び個人の関係を含みますが,本研究ではこの「利益相反」は発生しません。

【研究への参加が中止となる場合について】


研究中であっても,以下の場合には研究を中止させていただきます。なお,この研究でそれまでに集められたあなたの試料・情報は,あなたからのお申し出がない限り使用させていただくことをご了承ください。
1) あなたがこの研究への参加を取りやめたいと申し出たとき
2) あなたの具合が悪くなり,担当医師が研究をやめると決めたとき
3) 妊娠していることがわかったとき
4) 途中であなたがこの研究に参加できる人に当てはまらないことがわかったとき
5) 担当医師がこの研究をやめたほうがよいと判断したとき

【取得した試料・情報の将来の研究利用について】


あなたから提供された試料・情報を,miR-210以外のマイクロRNAの測定や炎症性物質と臓器障害との関連を調べる研究に二次利用する可能性があります。利用する場合は,その研究について新たに研究計画書を作成し,倫理審査委員会での承認・研究機関の長の実施許可を得たうえで利用いたします。

【研究に関する情報公開について】


研究に関する情報公開について
この研究は,大分大学医学部麻酔科学講座ホームページ(http://www.med.oita-u.ac.jp/anesth/)において公開しています。なお,個人が特定される情報は公開されません。また,ご希望があれば,個人情報の保護や研究の独創性の確保に支障を来たさない範囲内で,この研究計画の内容を見ることができます。
詳しくは下記の相談窓口へお問い合わせください。
【相談等への対応について】

この研究についての質問や心配なことがありましたら,相談窓口へお問い合わせください。
【相談窓口】
担当者氏名:大地 嘉史 (おおち よしふみ)
連絡先:〒879-5593 大分県由布市挾間町医大ケ丘1-1
大分大学医学部麻酔科学講座
電話 097-586-5943
【研究組織について】

この研究は以下の体制にて実施します。
【大分大学の研究組織】
研究責任者:
大分大学医学部附属病院 集中治療部 (講師) 大地 嘉史
研究分担者:
大分大学医学部附属病院 麻酔科   (講師) 小山 淑正