集中治療患者の人工呼吸器離脱後呼吸不全の治療と予防に対するネーザルピロータイプNPPVとHFNTの有用性の検討

本院集中治療部(ICU)で治療を受けられた患者さん・ご家族の皆様へ

【研究課題名】


集中治療患者の人工呼吸器離脱後呼吸不全の治療と予防に対する
ネーザルピロータイプNPPV(Noninvasive Positive Pressure Ventilation)
とHFNT(High Flow Nasal Therapy)の有用性の検討

【研究の対象】


この研究は以下の方を研究対象としています。

2018年1月~2020年12月の期間に
大分大学医学部附属病院の集中治療部(ICU)で加療された方

【研究の目的・方法について】


気管挿管を伴う人工呼吸管理を行っている患者さんにおいて、抜管後の呼吸不全は10-20%に生じ、ときに再挿管が必要になります。さらに、抜管後の呼吸不全による再挿管は入院期間を延長し、死亡率を悪化させることが知られています。一方で、抜管が可能であるにも関わらず人工呼吸器の離脱が遅れることも、人工呼吸器関連肺炎のリスクを増加しICU滞在期間、入院期間が延長する原因となります。そこで、抜管後呼吸不全リスクが高い患者さんに対しては、予防的に非侵襲的陽圧換気(NPPV : Noninvasive Positive Pressure Ventilation)や高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNT : High Flow Nasal Therapy)を行うことで抜管後呼吸不全を予防できる可能性が高まるという報告があります。心臓手術後の患者さんや再挿管のリスクが低い低酸素血症の患者さんにHFNTが推奨され、再挿管のリスクが高く、特に高二酸化炭素血症の患者さんではNPPVが推奨されています。特に近年では、HFNTはNPPVより患者の不快感が少なく容易に施行できることから、選択の幅が急速に広がっています。しかし、その選択は装置の利用しやすさ、手技者のスキルや経験値にも依存するため、各施設の状況に合わせて選択しているのが現状です。
NPPVには、鼻と口を覆うフェイスマスクタイプと、鼻からのみ呼吸補助を行う鼻マスクタイプがありますが、ネーザルピロータイプと呼ばれるものはHFNTで使用される鼻カニュラと類似した鼻孔のみを覆う特殊な形状を有しており、装着した際の快適性はHFNTと同等、かつ、呼吸を補助する能力についてはHFNCよりも優れていることが推測されます。
しかし、ICUにおける抜管後呼吸不全に対する、ネーザルピロータイプNPPVの有用性の報告はこれまで無いため、抜管後呼吸不全に対する呼吸療法としての有用性は確立されていません。 今研究の目的は、抜管後呼吸不全の予防及び治療に関して、ネーザルピロータイプNPPVが、HFNTと同等の装着時の快適性を有しつつ、HFNTよりも呼吸機能改善効果が高く再挿管率が低い、という仮説を検証することです。

研究期間:2019年9月13日から2022年12月31日まで


【使用させていただく情報について】


本院ICUで治療を受けられた際の診療記録(カルテ)から情報を収集させていただきます。具体的には、以下の情報を収集した後、統計解析を行います
(i) 患者背景
年齢
性別
身長
体重(実体重・理想体重)
BMI
診断名
手術術式(術後のみ)
基礎疾患(慢性心不全、慢性呼吸不全、肝不全、肝硬変、維持透析、免疫抑制状態)
術前呼吸機能(%肺活量、1秒率、対標準1秒量、COPD重症度(GOLD分類)、肺気腫の有無)
挿管理由
ICU入室時重症度(APACHE Ⅱスコア、 SOFAスコア)
(ii) 抜管前パラメータ(抜管直前)
挿管期間
人工呼吸器条件(モード、FIO2、IMV、 PEEP、 PS)
呼吸状態(呼吸数、 一回換気量、 分時換気量、 肺コンプライアンス)
動脈血ガス分析(PaO2、 PaCO2、 HCO3-、 pH、 BE)
SBT施行有無及び成否
Cuff leak test施行有無及び成否
再挿管リスク有無(APACHE Ⅱ>12、挿管の原因が心不全、age>65)
循環パラメータ(BP、 CVP、 PAP、 CAI)
CRRT有無
せん妄の有無(CAM-ICU)
(iii) 抜管後パラメータ
(抜管直後、NPPV・HFNT導入直前・直後、NPPV・HFNT離脱直後、再挿管時は再挿管直前・直後)
NPPVもしくはHFNT条件(NPPV:モード、 IPAP、 CPAP HFNT:FIO2、 ガス流量)
呼吸数
動脈血ガス分析(PaO2、 PaCO2、 HCO3-、 pH、 BE)
NPPV・HFNT施行時間
せん妄の有無(CAM-ICU)
鎮静の有無及び使用薬剤
NPPV・HFNT忍容性評価
Ⅰ 苦痛なし
Ⅱ 頻繁に外すが聞き入れる
Ⅲ 頻繁に外しそのために鎮静薬を開始・増量
Ⅳ 受入不可でNPPV・HFNT続行不可
再挿管原因(再挿管症例のみ)
(iv) アウトカム
NPPV・HFNT施行時の有害事象の有無
(腹部膨満、嘔吐、気胸、鼻孔周囲皮膚障害、肺炎)
再挿管の有無(抜管後48時間以内、さらに7日以内の再挿管率)
挿管を伴う人工呼吸期間
輪状甲状間膜切開の有無
気管切開施行の有無
ICU期間
入院期間
院内死亡
28日死亡
30日死亡
60日死亡
90日死亡

なお患者さんの診療記録(情報)を使用させていただきますことは本学医学部倫理委員会において外部委員も交えて厳正に審査され承認され、大分大学医学部長の許可を得ています。また、患者さんの診療情報は、国の定めた「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に従い、匿名化したうえで管理しますので、患者さんのプライバシーは厳密に守られます。当然のことながら、個人情報保護法などの法律を遵守いたします。

【使用させていただく情報の保存等について】


診療情報の保存は論文発表後10年間の保存を基本としており、保存期間終了後は、診療情報については、シュレッダーにて廃棄したり、パソコンなどに保存している電子データは復元できないように完全に削除します。

【外部への情報の提供】


本研究で使用した患者さんの情報を外部へ提供することはありません。

【患者さんの費用負担等について】


本研究を実施するに当たって、患者さんの費用負担はありません。
 

【研究資金】


本研究においては、公的な資金である大分大学医学部麻酔科学講座の基盤研究費を用いて研究が行われ、患者さんの費用負担はありません。

【利益相反について】


この研究は、上記の公的な資金を用いて行われ、特定の企業からの資金は一切用いません。「利益相反」とは、研究成果に影響するような利害関係を指し、金銭および個人の関係を含みますが、本研究ではこの「利益相反(資金提供者の意向が研究に影響すること)は発生しません。

【研究の参加等について】


本研究へ診療情報を提供するかしないかは患者さんご自身の自由です。従いまして、本研究に診療情報を使用してほしくない場合は、遠慮なくお知らせ下さい。その場合は、患者さんの診療情報は研究対象から除外いたします。また、ご協力いただけない場合でも、患者さんの不利益になることは一切ありません。なお、これらの研究成果は学術論文として発表することになりますが、発表後に参加拒否を表明された場合、すでに発表した論文を取り下げることはいたしません。
患者さんの診療情報を使用してほしくない場合、その他、本研究に関して質問などがありましたら、主治医または以下の照会先・連絡先までお申し出下さい。

【研究組織】


             所属・職名            氏名      
研究責任者   大分大学医学部附属病院 麻酔科・助教    大地 嘉史    
研究分担者       大分大学 麻酔科学講座・教授    北野 敬明     
大分大学医学部附属病院 集中治療部・講師    後藤 孝治     
        大分大学医学部附属病院 麻酔科・講師    日高 正剛     
大分大学医学部附属病院 集中治療部・助教    安田 則久     
大分大学医学部附属病院 集中治療部・助教    古賀 寛教     
大分大学医学部附属病院 手術部・助教     山本 俊介     
大分大学医学部附属病院 麻酔科・助教     牧野 剛典     
大分大学医学部附属病院 心臓血管外科・病院特任助教    小﨑 智史     
大分大学医学部附属病院 麻酔科・医員     庄 聡史     

【お問い合わせについて】

本研究に関するご質問等がありましたら下記の連絡先までお問い合わせ下さい。ご希望があれば、他の研究対象者の個人情報及び知的財産の保護に支障がない範囲内で、研究計画書及び関連資料を閲覧することが出来ますのでお申出下さい。

照会先および研究への利用を拒否する場合の連絡先:
住 所:〒879-5593 大分県由布市挾間町医大ヶ丘1-1
          大分大学医学部麻酔科学講座
  電 話:097-586-5943
 担当者:研究責任者 大地 嘉史(おおち よしふみ)