集中治療患者に対する抑肝散の鎮静作用及び抗せん妄作用の後ろ向き検討

1.研究の名称


集中治療患者に対する抑肝散の鎮静作用及び抗せん妄作用の後ろ向き検討

2.研究の目的及び意義


集中治療において,鎮静管理は患者さんの快適性や安全性の確保に加え,呼吸・循環の安定のためにも重要です.鎮静管理に鎮静薬の使用は必須である一方,鎮静薬の種類,投与量によっては呼吸・循環抑制や神経学的評価が困難になるなどの弊害があり,適切な鎮静維持が望まれます.また,集中治療患者は身体的な要因及び環境要因により高率にせん妄を発症します.せん妄を呈すると幻視幻覚や失見当識(現在の時間や場所,人や状況が分からなくなる)を生じます.そして,せん妄は鎮静管理をより困難にさせるのみならず,身体予後,医療経済的予後に悪影響を及ぼすことが分かっています.

しかしながら,現在,最適な鎮静薬およびせん妄治療薬は確立されていません.抑肝散は,従来小児の癇癪や夜泣き,成人の不眠症に使用されてきた漢方薬です.近年,認知症の症状への有効性が示されています.認知症の幻覚,妄想,攻撃性,不眠といった症状は,せん妄の症状と類似していることから,せん妄に対する抑肝散の使用で有効性を示す報告も認められます.また,鎮静薬として有用性を示した報告もあります.

本研究は,集中治療患者に対する抑肝散の鎮静作用,抗せん妄作用,呼吸・循環に与える影響,他の鎮静薬へ与える影響を評価し,集中治療領域での抑肝散の有用性を検討することを目的としています.

3.研究方法及び期間


【研究方法】

2013年12月1日から2014年11月30日の期間に,当院集中治療室で加療中に抑肝散を投与された全患者を対象とします.

研究は後方視的にカルテ上より血液検査データおよび血圧や呼吸状態などの臨床パラメータを抽出し,以下の4項目に関して検討を行います.

 

(1)鎮静度の評価

抑肝散投与前後で鎮静度の比較検討を行います.

(2)せん妄評価

抑肝散投与前後で,せん妄改善の有無を検討する.

(3)呼吸・循環への影響の検討

呼吸の評価法としてPaO2,PaCO2,呼吸数を,循環の評価法として心拍数,収縮期血圧を検討します.抑肝散投与前後でこれらのパラメータを比較検討します.

(4)他の鎮静薬へ与える影響の検討

抑肝散投与によって併用した鎮静薬の増減を評価します.また,抑肝散投与前と抑肝散投与後で薬剤投与量および薬価の比較検討を行います.

 

【研究期間】

2015年9月1日から2016年8月31日

 

4.研究対象者として選定された理由


2013年12月1日から2014年11月30日の期間に,当院集中治療室で加療中に抑肝散を投与された全患者を対象とします.

5.研究対象者に生じる負担並びに予測されるリスク及び利益


後方視的な観察研究であるため,対象者に健康上のリスクは生じません.

6.遺伝的特徴に関する重要な知見


本研究の実施に伴い,研究対象者の健康,子孫に受け継がれ得る遺伝的特徴等に関する重要な知見が得られる可能性はありません.

7.健康被害に対する補償および賠償


本研究で健康被害を生じる可能性はありません.

8.研究への参加は自由であること


本研究へ試料(診療記録のデータ)を提供するかしないかは患者さんご自身の自由です.従いまして,本研究に試料を使用してほしくない場合は,遠慮なくお知らせ下さい.その場合は,患者さんの試料は研究対象から除外いたします.また,ご協力いただけない場合でも,患者さんの不利益になることは一切ありません.なお,これらの研究成果は学術論文として発表することになりますが,発表後に参加拒否を表明された場合,すでに発表した論文を取り下げることはいたしません.

9.個人情報等の取扱い


【匿名化の方法】

匿名化については連結不可能匿名化します.

【公表の配慮】

この結果はきちんと記録し,学会や医学雑誌に発表されることがあります.あなたのプライバシーに関するすべての秘密を保持することを保証します.

10.試料および情報の保存


【試料】

保存方法:連結不可能匿名化したのち,研究責任者が厳重に保管します.
期  間:研究終了後1年間
廃棄方法:上記期間が終了後に個人情報が漏洩しないように厳重に匿名化を行った上で,適切に廃棄します.

【情報(研究に用いられる情報に係る資料を含む)】

保存方法:研究責任者が厳重に保管します.
期  間:研究終了後1年間
廃棄方法:上記期間が終了後に個人情報が漏洩しないように厳重に匿名化を行った上で,適切に廃棄します.

11.研究資金


本研究においては,公的資金である麻酔科学講座の基盤研究費を用いて研究が行われますので,患者さんの費用負担はありません.

12.本研究に係る利益相反


本研究は上記の公的な資金を用いて行われ,特定の企業からの資金は一切用いません.「利益相反」とは,研究成果に影響するような利害関係を指し,金銭及び個人の関係を含みますが,本研究ではこの「利益相反」は発生しません.

13.相談等の対応


【相談窓口】

担当者氏名:大地 嘉史

連 絡 先:大分大学医学部麻酔科学講座

電話 097-586-5943

14.取得した試料・情報の将来の研究利用


なし

15.研究に関する情報公開


ご希望があれば,個人情報の保護や研究の独創性の確保に支障を来たさない範囲内で,この研究計画の内容を見ることができます.詳しくは上記の相談窓口へお問い合わせください.